経営上の理由から、複数の法人で取締役を兼務することがあります。
複数の法人で取締役となっている場合、社会保険料の基礎となる役員報酬を合算する届出をしなければなりません。
この届出のことを「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」というのですが、案外忘れやすい手続なのでご注意下さい。
年金事務所の調査等で届出漏れがあとから発覚した場合は、2年まで遡って社会保険料を徴収される可能性もあります。
ただし、複数の法人で取締役となる場合でも、この届出が不要なケースが2つあります。
ひとつは、主たる法人では常勤役員で、従たる法人では「非常勤」役員となっている場合です。もう一つは、従たる法人で役員報酬がまったく支払われていない場合です。
従たる法人で非常勤役員となっている場合の考え方を解説します。
非常勤役員の考え方について日本年金機構は、以下の要素から総合的に判断するとしています。
2.法人における職以外に多くの職を兼ねていないか
3.役員会等に出席しているか
4.役員への連絡調整または職員に対する指揮監督をしているか
5.法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっているか
6.法人から支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないか
大まかな考え方としては、ある程度の役員報酬が支払われていたとしても、全く出勤がなく、ほとんど法人の業務に関与していないのが実情であれば「非常勤」と判断される可能性が高いです。
逆に役員報酬額は少額であったとしても、定期的な役員会への参加や法人業務への関与が認められる場合は、「常勤」と判断される可能性があります。
また、従たる法人で代表取締役(社長)となっている場合は、非常勤という考え方はしません。そのため、役員報酬が支払われていれば、必ず被保険者となりますので報酬の合算が必要です。
合算した場合の役員報酬が標準報酬月額表の上限(135万5千円)以上となる場合は、保険料は変わりませんが、その場合でも届出と保険料の按分は必要です。
代表取締役であれ、取締役であれ、役員報酬がゼロの場合は被験者となりませんので届出は不要です。
なお、今回は役員のケースで解説しましたが、一般従業員でも二以上事業所勤務に該当するケースも稀にあります。例えば、本業の勤務先で社会保険に加入していて、副業で法人の代表取締役となっていて役員報酬を受けている場合です。
将来的にはマイナンバーの本格運用によって、こうしたケースが捕捉されやすくなる可能性もあります。
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