中小企業が若年者採用で活用したい「ユースエール認定制度」

多くの中小企業が若手の採用に苦戦しています。中小企業は大企業にくらべて知名度や広告予算の点でどうしても不利な採用活動となってしまいがちですが、そんな中小企業の採用を支援してくれる制度があるのをご存知ですか。

「ユースエール認定制度」は、若者の採用や育成に積極的で、若者の雇用管理の状況が優良な中小企業を国が認定する制度です。

「ユースエール認定企業」となるメリット

ユースエール認定企業になると、国がその企業の情報発信を後押ししてくれます。また、企業が求める人材の採用支援が受けられたり、求職中の若者との接点が広がるなど、さまざまなメリットがあります。

① 無料で効果的に自社のPRができます。

ハローワークなどで重点的なPRを実施
「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点で認定企業をPRしてくれるので若者からの応募増が期待できます。
また、厚生労働省が運営する、若者の採用・育成に積極的な企業などに関するポータルサイト「若者雇用促進総合サイト」などにも認定企業として企業情報が掲載されるため、会社の魅力を広くアピールすることができます。

② 就職を希望する若者との接点が増えます。

②認定企業限定の就職面接会などへの参加が可能
各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などに案内され、正社員就職を希望する若者などの求職者と接する機会が増え、より適した人材の採用を期待できます。

③ 求職者以外にも自社がホワイト企業であることを広くアピールできます。

自社の商品、広告などに認定マークの使用が可能
認定企業は、このユースエール認定マークを、自社のホームページや広告などに付けることができます。認定マークを使用することによって、優良企業であるということを対外的にアピールすることができます。

④ 各種助成金が増額されます。

若者の採用・育成を支援する関係助成金を加算
認定企業が若者の採用・育成を支援するため、次の各種助成金を活用するときに一定額が加算されます
1.キャリアップ助成金
35歳未満の有期契約労働者を正社員に転換する場合、1人当たりの助成額が57万円から12万円加算されて69万円に
(生産性要件に該当する場合は72万円→84万円
2.人材開発支援助成金
特定訓練コースの経費助成率が最大60%から75%に
3.トライアル雇用助成金
35歳未満の者をトライアル雇用する場合の助成金額が、月額4万円から1万円加算されて月額5万円に(最長3ヵ月)
4.特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)
1人当たりの助成金額が、70万円から10万円加算されて80万円に
※平成31年3月31日までに募集等を行い、平成31年4月30日までに対象者を雇入れた事業主が対象

⑤ 低利融資が更に優遇利率で受けられます。

日本政策金融公庫による低利融資
日本政策金融公庫が実施している「地域活性化・雇用促進資金(企業活力強化貸付)」を利用する際、基準利率から-0.65%での低利融資を受けることができます。

⑥ 公共入札で加点評価されます。

公共調達における加点評価
公共調達に認定企業が入札するとき、契約内容によって加点評価される場合があります。

とはいえ、認定基準のハードルは高めです。

「ユースエール認定企業」となるには?

中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)であり、以下の認定基準を全て満たす必要があります。

認定基準
1.学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること
2.若者の採用や人材育成に積極的に取り組む企業であること
3.以下の要件をみたしていること
・「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
・直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下
・前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと
・前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上
・直近3事業年度で男性労働者の育児休業等取得者が1人以上又は女性労働者の育児休業等取得率が75%以上
4.以下の情報を公開していること
・直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
・研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定等の制度の有無とその内容
・前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合
5.過去3年間に認定企業の取消を受けていないこと
6.過去3年間に認定基準を満たさなくなったことによって認定を辞退していないこと
7.過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
8.過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
9.暴力団関係事業主でないこと
10.風俗営業等関係事業主でないこと
11.各種助成金の不支給措置を受けていないこと
12.重大な労働関係等法令違反を行っていないこと

認定申請の方法

ユースエール認定企業となるためには以下の書類をそろえて、各都道府県にある労働局へ申請します。上記の基準を満たしていることが確認された後、概ね1ヵ月ほどで認定通知書が交付されます。

認定申請に必要な書類
・基準適合事業主認定申請書
・新規学卒者等採用実績及び定着状況報告書
・人材育成方針・教育訓練計画報告書
・所定外労働時間等実績報告書
・有給休暇取得実績報告書
・育児休業等取得実績報告書
・関係法令遵守状況報告書
・誓約書(認定申請用)
・企業情報報告書

以上、ユースエール認定制度の概要をご紹介しました。
「優良企業」のお墨付きをもらうわけですので、認定基準はかなりハードルが高いと感じたのではないでしょうか。しかし、こうしたハードルを超える努力をしないと、中小企業の採用力はなかなか上がっていかないというのも現実です。
中小企業だから良い人材が採れないとあきらめるのではなく、採用できない原因を分析して少しでも雇用環境を改善していく努力が重要です。

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