毎年この時季は経営者、従業員ともに世間の賞与相場が気になるところです。
経団連が「年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況」を毎年公開していますが、平均で96万円を超える額は中小企業経営者やそこで働く従業員の感覚からかけ離れた数字に見えるかと思います。
それでは中小企業の実態としての賞与額はどれくらいなのでしょうか。
企業の賞与実態を調べた統計で、もっとも母集団が大きいのが毎月勤労統計調査です。毎月勤労統計調査は、毎年夏季賞与の状況を9月、年末賞与の状況を2月に公表しており、中小企業の賞与実態を把握するのにもつかえます。
こちらは毎月勤労統計調査(平成31年2月分結果速報等)から平成30年冬季賞与のデータを一部加工したものです。
調査結果をみると30人未満の事業所では、そもそも賞与が支給されていない割合が30%以上もあることがわかります。また、事業所規模によって大きく状況が異なり、規模が大きくなるにつれて、支給額、支給率ともに上がる傾向がうかがえます。
こちらは産業別にみた支給状況です。やはり「電気・ガス業」といったインフラ系や、「情報通信業」といったIT系では賞与額が高い傾向があります。一方、「飲食サービス業」や「生活関連サービス業」は一般に生産性が低いとされる業種であり、小規模事業所が多くなるためか賞与額も低水準となっています。
今年の相場感をより最近の統計で知るのに、大阪シティ信用金庫が公開している「中小企業の冬季ボーナス支給予定」もつかえます。これは、大阪府内の中小企業1,000社余りから聞き取りによって調査した結果となります。この調査結果でも、「支給する」と回答した企業の割合は、全企業の65.2%となっており、そもそも支給を予定していない企業が全体の35%近くあることがわかります。従業員規模別にみると、次のとおり20人未満の規模では40%以上が支給自体が予定されていないという結果となっており、やはり事業規模が小さくなるほど賞与の支給率も支給額も低水準となることがわかります。
全体でみた一人当たり平均支給予定額は、29万7,639円となっており、対前年冬比でみると全業種・規模で前年を上回っています。景気はやや後退局面となっていますが、人手不足感が続くなか「従業員のモチベーション向上」のため、多少無理をしてでも支給せざるを得ない状況もあるかと思います。
とはいえ、最終的に賞与額を決めるには自社の業績や支払能力を考慮する必要があります。従来から基本給の〇ヵ月といった「基本給連動型」で賞与額を決定するのが主流ですが、より効果的に従業員のモチベーション向上を図るなら、会社の業績に応じて賞与原資を決定し、賞与原資の配分方法は予め人事評価制度等でルールを決めておくというやり方をおすすめします。
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。