まず、大原則として、労働基準法では「有給休暇を与えなければならない」と規定していますので、金銭を支給しても有給休暇を与えたことにはなりません。
有給休暇は、通常の休日とは別に、賃金の保障された一定日数の休暇を与えることで労働者の心身のリフレッシュをはかることを目的とするもの、だからです。
そのため、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇日数を減らしたり、請求された日数を与えないことはできません。(昭30.11.30基収4718号)
ただし、次の3つの場合に限り、例外的に買上げすることができます。
・法定の付与日数を超えて年次有給休暇を与えている場合の超過分
・退職時に未消化で残った分
とくに、退職時に未消化で残った分の買上単価はどうしたら良いか、という相談をよく受けます。
前述のように有休買上自体を法は想定していませんので、この買上単価の計算方法についても、労働基準法には規定されていません。
そのため、買上単価を調整的に決定することは必ずしも労働基準法に違反しません。
買上単価の決定方法としては、以下が考えられます。
・日給者の場合は、日給単価
・時給者の場合は、平均的な1日の所定労働時間に時給を乗じた金額
・平均賃金
・健康保険の標準報酬月額を30で除した金額
・上記の計算で求めた金額の〇%
・勤続年数や役職に応じて〇円
・一律に〇円
無用な労使トラブルを避けるためにも、この買い上げ単価の設定には労使合意が望ましいです。
また、しっかりと有休消化を促すためにも、労働者にとっては買い上げられると不利になる(消化した方が有利になる)ような低めの単価を設定するのが望ましいです。
とはいえ、このような年次有給休暇の買い上げを行うことは、労働基準法で事業主に義務付けられているものでもありません。そのため、当社では年次有給休暇の買上げは一切行わない、というルールにしてしまうことも可能です。
ただし、退職時にまとめて残った有休を消化している間に、新たな有休が発生したときは、その新たに発生した有休についても本人からの申請があれば、法的には拒否できないという問題も生じ得ます。また、月をまたいだ退職時の有休消化により発生する社会保険料の会社負担分もバカになりません。
そのため退職時にまとめて買い上げる必要がないように、有休は在職中に計画的に消化を促すのが労使双方にとってメリットが大きいかと思います。