求人するときに給与の世間相場を簡単に調べる4つの方法(アップデート)

はじめに

求人する際の給与額をどう決めるかは、多くの企業が迷うところではないでしょうか。特にここ数年は求人難や物価高騰の影響もあり、賃金相場の上昇傾向が続いたため、一昔前の賃金ではなかなか良い人材が集まりにくい状況です。少なくとも世間相場からして見劣りする給与設定は避けたいところです。
そこで今回は、求人する際に賃金・給与の世間相場を簡単に調べる方法として次の4つをご紹介します。

① Indeedの「給与調査」を利用する
② 求人ボックスの「給料ナビ」を利用する
③ 労働局が公開する「求人求職賃金情報・バランスシート」を確認する
④ 「賃金構造基本統計調査」を確認する
今回は、歯科医院が「歯科衛生士」を採用する場面を想定し、上記の4つの方法で給与相場を調べる方法を順番に解説します。

① Indeedの「給与調査」を利用する

Indeedは世界最大の求人サイトですが、その実態は求人情報に特化した検索エンジンです。
現在、Web上に公開されている他の求人サイトやハローワークの求人情報、企業の採用ホームページなど、さまざまな求人情報を「クローラー」という自動収集ロボットで集めています。
月間の新規求人追加数は620万件以上とされ、この膨大な求人データを強力な検索エンジンで誰でも無料で閲覧できるのが特長です。求職者だけでなく、求人する企業も無料で利用できますが、有料サービスを使うことで、自社の求人を目立たせたり、検索上位に表示させることが可能です。
有料の場合は、求人がクリックされるたびに課金されるWeb広告と同様の仕組みとなっています。
このIndeedの膨大な求人データを活用することで、自社がこれから求人を行う際の賃金相場を簡単に調べることができます。
まず、Google検索から「Indeed」にアクセスし「給与調査」という項目をクリックしてください。

すると、キーワードと勤務地を入力するための検索窓が表示されます。今回は職種に「歯科衛生士」と入力します。キーワードの入力途中に予測候補として関連職種がサジェストされますので、最も近いものを選んで確定します。


次に、検索する地域を指定します。「福岡」と入力すると、さらに細分化された地域がサジェストされますので、希望のエリアを絞り込んで検索します。これだけで、検索した職種のこの地域における平均給与額を確認することができます。右側のプルダウンメニューをクリックして、年収や時給など他の支給形態で表示させることもできます。


検索結果に表示される給与データは、過去3年間にIndeedで掲載された求人情報などを基に推定された値です。そのため、現在掲載されている求人の平均給与額とは多少の誤差が生じる可能性があります。この点を理解した上で、参考値として利用するのが良いでしょう。

ここまでの機能は、Indeedのサイトに直接アクセスすれば利用登録なしで使えますが、求人企業は利用登録を行うことでより、以下のとおり詳細な情報をまとめた、「採用市場レポート」を無料で入手できます。このレポートでは、検索した職種の賃金データの推移や中央値など、さらに広範な情報を把握することが可能です。


Indeedの給与調査は手軽さや使い勝手の面で、もっとも利用しやすい給与相場の確認方法ですが、もっと多角的な給与相場を手軽に調べたい場合は、求人ボックスの「給料ナビ」もおすすめです。

② 求人ボックスの「給料ナビ」を利用する

求人ボックスは、価格.comなどを運営するカカクコムという日本の企業が提供する求人検索エンジンです。求人企業は無料で求人情報を掲載でき、求職者が求人情報をクリックした際に費用が発生するクリック課金制を採用しており、この点はIndeedの有料版と共通しています。2024年時点で利用者数は1,000万人を突破しており、この4年間で急速に成長した注目の求人検索サービスとなっています。
求人ボックスには「給料ナビ」というページがあります。


ここでは求人ボックス内の求人情報や政府統計データをもとに、さまざまな切り口で給与動向を調べることができます。ユーザーインターフェースも優れており、使いやすさが特長です。
トップページから下にスクロールすると出てくる「職種一覧から給料情報を探す」には五十音順に職種が分類されていますので、「歯科衛生士」なら「さ」行の「もっと見る」をクリックし


次に表示される職種一欄にある「歯科衛生士」をクリックします。


そうすると選択した職種:歯科衛生士の雇用形態別の賃金情報が表示されます。


また、地域別、仕事の条件別、年代別、政府統計など、さまざまな切り口で給与情報を参照することができますので、多角的に職種の給与相場をチェックできて便利です!

③ 労働局が公開する「賃金情報・バランスシート」を確認する

「賃金情報・バランスシート」は、地域ごとのハローワークに企業が求人条件として提示している賃金額と、ハローワークで仕事を探している人が希望する賃金額や、求人数と求職者数を比較することができる情報で、各都道府県労働局が毎月Web上で公開しています。
地域のハローワークの賃金情報を調べる方法は簡単です。Web検索で「調べたい地域名 ハローワーク バランスシート」と入力するだけです。例えば、「福岡 ハローワーク バランスシート」と検索します。

検索結果のトップに表示される「賃金情報・バランスシート」をクリックし、労働局の該当ページに移行してください。ここでの表示は各県の労働局によって多少異なりますが、年別、月別の賃金情報が並んでいるかと思います。


毎月の賃金情報は、おおむね2カ月前のデータが最新版として公開されます。ここでは、令和6年10月分の情報をクリックすると、次のようなPDF形式で閲覧できます。このPDFには、大まかな職種分類がAからKまで11種類あり、さらに中分類で48職種に分かれています。

例えば、「歯科衛生士」の場合、該当する職種を確認することで、求人賃金の平均値としての上限と下限、また求職者が希望する賃金のデータを把握することができます。


現在の自社の求人賃金が同業他社の上限と下限のレンジにおさまっているかや、採用職種の求職者希望額からかけ離れていないかをカンタンに確認することができます。

④ 「賃金構造基本統計調査」を確認する

公的機関の賃金統計を活用する方法もあります。なかでも「賃金構造基本統計調査 = 賃金センサス」は、日本で最も母集団が多い賃金統計として知られています。Indeedなどの求人検索エンジンが「求人条件」をもとに統計をとっているのに対し、この賃金センサスでは、実際に支給されている賃金を労働者の年齢、性別、学歴、企業規模、雇用形態などで分類して集計しています。そのため、採用予定者の賃金条件として必要なデータを絞り込んで確認することができます。

具体例として「歯科衛生士」の賃金データを調べる手順を詳しく説明します。
今回は、仮に調査対象とする歯科衛生士の条件を以下のように設定し、即戦力人材を採用する想定で、採用時賃金を検討したいと思います。

・年齢:「25歳以上35歳未満」
・経験年数:「5年以上9年未満」

これらの条件を基に、賃金構造基本統計調査を利用して、該当する賃金データを調査します。

ステップ1:Web検索でデータに「賃金センサス」にアクセス

1.Google検索で「賃金センサス」を検索し、検索結果のトップに表示される「賃金構造基本統計調査結果の概要」をクリックします。

3.最新の調査結果(例:「令和5年賃金構造基本統計調査結果の概要」)を選択します。

ステップ2:統計表へのアクセス

1.調査概要ページの下部に進み、「統計表一覧」のリンクをクリックし

2.政府統計の総合窓口「e-Stat(いーすたっと)」のサイトに移行します。

ステップ3:職種別データの選択

1.いろいろあって戸惑うかもしれませんが、ここでは「職種」の項目をクリックします。


2.次も複数の統計が並びますが、小分類とかかれた統計が具体的な職種に分類された統計となります。ここでは、年齢、経験年数、所定内給与、年間賞与が調査したいので、表番号10番の右側にある「DB(データベース)」のアイコンをクリックします。


2.統計データが表示されますが、ここから必要なデータの絞り込みをかけていきます。
左側にある「表示項目選択」をクリックして、条件設定画面に移行します。

ステップ4:条件の設定

ここに表示される赤枠の項目から自社に必要な項目のみ選択していきます。今回は、職種、企業規模、年齢階級、経験年数の項目をカスタマイズします。


1.職種:一旦すべての選択を解除し、「歯科衛生士」のみにチェックを入れて確定します。


企業規模以下も同じように、①全解除、②表示切り替えで必要な項目にチェック、③確定の順番でカスタマイズしていきます。

2.企業規模:歯科クリニックを想定しているため、「10人以上99人」のみにチェックを入れて確定します。
3.年齢条件:「25歳以上35歳未満」の2つにチェックを入れて確定します。
4.経験年数:「5年以上9年未満」にチェックを入れて確定します。
5.時間軸:最新2年分のみを選択します。

ステップ5:データの確認と加工

1.最後に確定ボタンを押してデータを再表示します。


2.表示されたデータから以下の情報を確認できます

25歳以上29歳以下の所定内給与は、28万300円、年間賞与額は42万7,000円となり、年収ベースでは所定内給与額×12カ月と賞与額の合計で379万円程だと分かります。
30歳以上34歳以下の所定内給与は29万500円、年間賞与額は42万5,300円となり、年収ベースでは391万円程だと分かります。

なお、所定内給与には、基本給に加え、家族手当や住宅手当、通勤手当なども含まれます。そのため、基本給のみを考える場合、この金額より小さくなる点に注意してください。

このように、賃金センサスのデータは、年齢や経験年数、企業規模など、自社に必要な項目を特性別に加工して使うことができます。また、Indeedや求人ボックスのような民間の求人サイトの統計よりも細かく分類できる点や、実際に支払われた賃金データであるため、信頼性が高いという特徴があります。そのため、無料で使える賃金統計のなかでも、特に賃金センサスのデータはいろんな場面で活用されています。また、検索結果は閲覧だけではなく、Excel形式のデータとしてダウンロードすることもできます。データを加工することで自社のニーズにあった情報として活用することもできます。
簡単ではありますが、これが賃金センサスのデータ活用の一例でした。

その他にも賃金統計を調べる方法はいろいろありますが、上記4つは比較的簡単に賃金給与の世間相場を確認できるのでオススメします。

まとめ

今回は、求人募集時に自社が提示する賃金・給与条件が適正かどうかを調べる方法をご説明してきましたが、この賃金相場は、現在雇用している従業員の賃金水準が適正かどうかもチェックできます。
賃金は基本的に労働市場の需給バランスで決まりますので、今いる従業員の賃金が世間相場と比較して低すぎる場合は離職リスクがあります。離職原因として、常に上位にあがるのが賃金でもあります。
今後数年間は最低賃金が毎年50円前後上がっていくという、これまでにない時代となります。
企業としては採用時賃金はもちろん、在籍中の従業員の賃金についても、定期的に現在の賃金水準が適正かということをチェックする必要があります。

コメントを残す