新型コロナウイルスの影響を受け、雇用調整助成金の特例が発表されました

各地で新型コロナウイルスの感染が確認され、外出や旅行を控える人が多くなっています。
全国の観光地でも、政府が一部地域からの中国人の入国を拒否している影響もあり、観光施設などでは中国人団体客のキャンセルも相次いでおり、関連産業の経営面にも大きな影響が出始めているようです。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、中国(人)関係の売上高や客数、件数が全売上高の10%以上を占め、中国観光客等の急減によって影響を受けている事業主を対象に雇用調整助成金の特例を実施することを公表しました。

雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に受給することができる助成金です。

受給額は?
事業主が支払った休業手当負担額の2/3(1人1日当たり上限8,335円が上限です)
教育訓練を実施した場合、1人1日あたり1,200円が加算されます。
1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分受給できます。

「影響を受ける」事業主の例
・ 中国人観光客の宿泊が無くなった旅館・ホテル
・ 中国からのツアーがキャンセルとなった観光バス会社等
・ 中国向けツアーの取扱いができなくなった旅行会社

総売上高等に占める中国(人)関係売上高等の割合は、前年度または直近1年間の事業実績により確認されます。リーフレットには「初回の手続の際に、中国(人)関係売上高等の割合を確認できる書類をご用意ください。」と記載されていますが、福岡労働局では、この確認資料として領収証、予約台帳、クレジットカード決済の明細等を確認するようです。

特例措置は、休業等の初日が、令和2年1月24日から令和2年7月23日までの場合に適用され、特例の内容は以下の4項目です。

① 休業等計画届の事後提出が可能となります。

通常、助成対象となる休業等を行うためには、事前に計画届の提出が必要です。しかし、緩和措置により、令和2年1月24日以降に初回の休業をする場合は、計画より前に休業をしても、令和2年3月31日までに計画届を提出すれば、休業等の前に提出されたものとみなされます。

② 生産指標の確認対象期間が3か月から1か月に短縮されます。

販売量、売上高等の事業活動を示す指標(生産指標)の確認対象期間は、通常3か月ですが、緩和措置により最近1か月の生産指標が、前年同期に比べ10%以上減少していれば、生産指標の要件を満たします。

③ 最近3か月の雇用指標が対前年比で増加していても助成対象となります。

通常、雇用保険被保険者及び受け入れている派遣労働者の雇用量を示す雇用指標の最近3か月の平均値が、前年同期比で一定程度増加している場合は助成対象となりませんが、その要件が撤廃されます。つまり、前年同期比で雇用者等が増えていても助成対象となります。

④  事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象となります。

令和2年1月24日時点で事業所設置後1年未満の事業主については、生産指標を令和元年12月の指標と比較し、中国(人)関係売上高等の割合を、事業所設置から初回の計画届前月までの実績で確認します。

現時点では、「影響を受ける」事業主として、旅館やホテル、観光バス会社、旅行会社が挙げられていますが、これらの業種と取引のある関連業界もすでに影響を受けているものと考えられます。また今後、新型コロナウィルスがまん延した場合は、一般企業にも影響が波及してくるおそれもあります。そのため、企業経営者や人事労務担当者は、この雇用調整助成金の支給要件等を把握しておく必要があるかと思います。