今度こそ利便性が実感できるマイナンバー制度になるか

日本の全人口に占めるマイナンバーカードの普及率がようやく7割になろうとしています。すでに交付枚数では運転免許証を超えたということですが、政府が目標として掲げている2022年度内の普及率100%は難しそうです。

政府はこれまで、総額2兆円超の国費を投じたマイナポイント事業やTVCMでマイナンバーカードの普及を進めてきましたが、せっかく作ったマイナンバーカードも使われないまま眠っているのが現状だと思います。現時点ではほとんどの行政手続に、そもそもマイナンバーカードの認証機能を使う場面はないからです。(マイナンバーは使いますが)

マイナンバー制度は、税と社会保障、災害対策という3分野の行政手続を円滑に進める目的で2013年にマイナンバー法が成立し、2016年からマイナンバーカードの交付がスタートしました。7年たった現在、税の部分ではかなり活用が進み、以前より税逃れはしにくくなりましたが、社会保障と災害対策分野では混乱ばかりが目立ち、まだこれといった成果が現れていないのが現状です。

2020年にコロナ対策事業として実施され、全国民に一律10万円を給付する特別定額給付金制度でも、マイナンバーカードが混乱をまねいた残念な事例となってしまいました。このように国民がマイナンバーやマイナンバーカードを活用するメリットがまったく実感できない以上、普及が進まないのもムリはありません。

本来は自治体や民間企業もマイナンバーカードの認証機能を利活用ができる仕組みになっているのですが、マイナンバーカードが普及しないためこれも進みませんでした。

とはいえ、今後数年で状況がおおきく変わる可能性もあります。政府が今国会に提出するマイナンバー法改正案では、税、社会保障、災害対策の3分野に限定してきたマイナンバーの利用範囲を広げ、引越時の自動車変更登録や国家資格の申請などもマイナンバーカードの認証機能をつかってオンラインで完結できるようになります。

また、今年の5月以降はマイナンバーカードのICチップに搭載されている認証機能をスマホに組み込む仕組みが導入される見込みです。これによりマイナンバーカードよりも手軽かつ安全な本人認証が可能となり、ユーザーの利便性や安全性が高まることが期待されます。

 

本来、マイナンバー制度はあらゆる行政手続をデジタル化し、国民の利便性の向上、行政コストの削減、データ利活用を通じた新たな価値創造をもたらし、日本のデジタル社会の基盤になることが期待されていました。

これまでの10年間で、それは遅々として進みませんでしたが、今後は当初の目的を達成し、全国民が利便性を実感できる制度に成長してほしいと願います。