1年単位の変形労働時間制カレンダーの作り方|上限と年間休日の早見表
1年単位の変形労働時間制のカレンダーは、対象期間の労働日と、日ごとの労働時間を前もって決めた表です。作る順番、6つの上限、うるう年も分かる年間休日の早見表、作った後の注意まで解説します。
結論: 1年単位の変形労働時間制のカレンダーは、対象期間の労働日と、日ごとの労働時間を前もって決めた表です。上限をすべて守って作り、労使協定とともに、起算日までに労働基準監督署へ届け出ます。
作る順番、上限の一覧、年間休日の早見表、作った後の注意までを解説します。
この記事の要点
- 上限は、週平均40時間・1日10時間など6つです。
- 特例事業場でも、週平均40時間が上限です。
- 1日8時間なら年間休日105日。うるう年も同じです。
- 作った後は、原則として途中で変えられません。
- 上限を自動で確かめる、当法人の無料の年間休日カレンダー作成ツールもあります。
1年単位の変形労働時間制のカレンダーとは?労使協定で決める労働日の表
御社の年間カレンダーは、どの書類の一部でしょうか。1年単位の変形労働時間制のカレンダーとは、対象期間の労働日と、労働日ごとの労働時間を前もって決めた表です。労使協定の中身で、協定届に別紙で添えます。
この記事で使う言葉
- 1年単位の変形労働時間制(1年変形): 1か月を超え1年以内の期間を平均して週40時間以内に収めれば、特定の日や週に法定時間を超えて働かせられる制度。
- 対象期間: 平均して週40時間以内に収める期間。1か月を超え1年以内で、3か月や半年でもよく、起算日を決める。
- 労使協定: 会社と、過半数労働組合(なければ過半数代表者)が結ぶ書面の取り決め。1年変形は、これが無いと使えない。
カレンダーの正体は、法律が協定に求める「労働日及び当該労働日ごとの労働時間」です。協定届の様式も、各日・各週の労働時間と所定休日を別紙で添えるよう求めています。
1か月単位の変形労働時間制は就業規則でも導入できますが、1年単位は書面の労使協定が要件です。就業規則にカレンダーを載せるだけでは使えません。
労働基準法では、対象期間が3か月を超えると、36協定の限度時間も月42時間・年320時間に下がります。
私は、1年変形は労使ともに便利な労働時間制だと考えています。ただし、非常に多くのルールがあります。
根拠労基法32条の2・32条の4第1項・36条4項、労基則 様式第4号 記載心得3
では、その多くのルールを、どの順番で当てはめて作ればよいのでしょうか。
カレンダーの作り方は?起算日から届出までの6つの STEP
カレンダーは、次の6つの STEP の順に作ります。協定届は、起算日までに出します。
- 起算日と対象期間を決める: 4月1日など。協定届には、対象期間に起算日を括弧書きします。
- 上限の日数と時間を出す: 1年の総労働時間は2,085.71時間(うるう年は2,091.42時間)まで。労働日の上限は1年280日です。
- 休日を置く: 祝日を休日にする義務は、労働基準法にはありません。法定休日(週1日か4週4日)は置きます。
- 上限を確かめる: 次の章の6つのルールを、すべての日と週で確かめます。
- 協定届に添えて届け出る: 協定届(様式第4号)に別紙で添え、起算日までに労働基準監督署へ。過半数代表者の選び方を誤ると、協定は無効です。
- 周知する: 労使協定は、カレンダーも含めて従業員に周知する義務があります。
窓口や郵送では、協定届・協定書・カレンダーを正副2部出します。3〜4月や12〜1月などは大変混み合うと案内している労働局(福井労働局など)もありますので、この時期に提出する場合は、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

私は仕事がら専用のシステムを使ってカレンダーを作成していますが、以前から弊所顧問先の事業主や担当者から、便利なカレンダー作成ツールがないかと問い合わせをいただいていました。いろいろ調べてみたのですが、なかなか無料で使える良いものが見つからなかったので、私が納得できるカレンダー作成ツールを自作してみました。
カンタンな操作で休日カレンダーが作れ、企業名・事業所名を入れれば、自社独自のカレンダーになります。休日や所定労働時間を変えてシミュレーションしたり、PDFに出力し保存することができます。完全無料・登録不要のWebアプリですので、どうぞご自由にご利用ください。
(Webアプリですが、計算や表示はすべてお使いのブラウザの中で行われます。入力した企業名・事業所名や休日の設定が、当法人のサーバーなどWeb上に送られたり、保存されたりすることはありません。入力した内容はブラウザにも残らず、ページを閉じたり再読み込みしたりすると最初からやり直しになりますので、作ったカレンダーはPDFで保存してください。)

起算日を選ぶだけで、1年分のカレンダーができあがります
祝日を反映し、週平均40時間・労働日数280日など6つの上限を自動でチェックします(特定期間の12日は対象外)。
企業名を入れたA4のPDFで保存でき、社内への配布や届出の準備に使えます。
根拠労基法32条の4第4項・35条・106条、労基則12条の2・12条の4第6項、様式第4号 記載心得2・3・5
では、STEP 4 で確かめる6つのルールとは、何でしょうか。
カレンダーで守る上限は?週平均40時間など6つのルール
上限は次の6つで、すべての日と週で守ります。労働日数280日と、48時間を超える週の制限は、対象期間が3か月を超えるときだけかかります。
カレンダーで守る6つの上限
週平均すべての期間
40時間以内
特例事業場も40時間
労働日数3か月を超える期間
1年280日
1年未満は按分、端数切り捨て
1日すべての期間
10時間まで
—
1週すべての期間
52時間まで
—
48時間を超える週3か月を超える期間
連続3週まで、3か月ごとに3回まで
—
連続勤務すべての期間
6日まで
特定期間は1週1日の休日、最長12日
- 48時間を超える週の「週」は、対象期間の初日の曜日から数えます。条文から当法人が整理しました。
この章の言葉
- 特定期間: 対象期間のうち、特に忙しい期間として協定で定める期間。連続勤務を、1週1日の休日が取れる日数まで延ばせる。
- 特例事業場: 商業、映画の映写・演劇などの興行、保健衛生、接客娯楽の事業で、常時10人未満の事業場。通常は週44時間まで。
よくある間違い: 特例事業場の週44時間
特例事業場でも、1年変形の上限は週平均40時間です。当法人のツールでは「特例事業場(週44時間)」を選んでカレンダーを作ることもできますが、これはあくまで1年変形以外のカレンダー用の設定です。週平均44時間で作ったものは、1年変形のカレンダーとしては使えませんのでご注意ください。
「280日まで働かせられる」とは限りません。計算すると、1日8時間で280日働けば週平均42.96時間です。280日を使えるのは、1日の平均が7時間26分以下のときです。
私は、よく陥るのは、休日が足りずに年間の労働日数が限度を超えてしまうケースと、うるう年に1日労働時間が多くなってしまうケースだと考えています。
根拠労基法32条の4、労基則12条の4第3〜5項・25条の2第1項・第4項、平成11年基発第45号
では、うるう年には、休日を何日にすればよいのでしょうか。
年間休日は何日必要?所定労働時間ごとの早見表とうるう年
1日8時間の会社は、うるう年に休日を増やすべきでしょうか。毎日8時間なら年間休日は105日以上で、うるう年も同じです。1日増えるのは、7時間45分・7時間30分・7時間などです。
年間休日の早見表(対象期間1年・毎日同じ時間・前の協定が無い場合)
| 1日の所定労働時間 | 365日の年 | うるう年(366日) | 決め手 |
|---|---|---|---|
| 9時間 | 134日 | 134日 | 週平均40時間 |
| 8時間 | 105日 | 105日 | 週平均40時間 |
| 7時間45分 | 96日 | 97日(+1) | 週平均40時間 |
| 7時間30分 | 87日 | 88日(+1) | 週平均40時間 |
| 7時間 | 85日 | 86日(+1) | 労働日数280日 |
- 休日=暦日数−労働日の最大(総労働時間の上限(40時間×暦日数÷7)÷1日の時間。小数点以下切り捨て、280日まで)。
- 値は、厚生労働省のモデル就業規則の表と同じです。
- 4月起算なら、2027年4月〜2028年3月が366日です。
うるう年に前の年と同じ休日数だと、違反になることがあります。7時間45分・96日なら2,092.5時間で上限を約1時間超え、7時間・85日なら労働日が281日になります。
私は、年次有給休暇の計画的付与と組み合わせると、労使ともに計画が立てやすいと考えています。5日付与義務の履行や、連休とつなげた大型の連続休暇にもつながり、社員の満足度や働きやすさが高まる可能性があります。

計画的付与の日は、年5日の取得義務に数えられます。ただし、所定休日を労働日に変え、その日を会社が年休として時季指定するのは、厚生労働省が「望ましくない」としています。
根拠労基法39条6〜8項、労基則12条の4第3項、厚労省「モデル就業規則」令和7年12月版 第20条、同「年5日の年次有給休暇の確実な取得」Q7
では、先の月の忙しさが読めないときは、どこまで決めておけばよいのでしょうか。
シフトはいつまでに決める?区分期間なら各期間の30日前まで
先が読めない月は区分期間にすれば、最初の期間だけ日ごとに決め、残りは労働日数と総労働時間だけを協定で決めておけます。日ごとのシフトは、各期間の初日の30日前までに、過半数労働組合(なければ過半数代表者)の同意を得て書面で定めます。
この章の言葉
- 区分期間: 対象期間を1か月以上ごとに区切った各期間。最初の期間以外は、日ごとのシフトを後から決められる。
4月1日起算で、月ごとに区分した場合(厚生労働省の例)
| 区分 | 協定で決めること | 日ごとのシフトの期限 |
|---|---|---|
| 4月分(最初の期間) | 日ごとの労働日と労働時間 | — |
| 5月分 | 労働日数と総労働時間 | 4月1日(30日前) |
| 6月分 | 労働日数と総労働時間 | 5月2日(30日前) |
- 5月分と6月分のシフトは、過半数労働組合(なければ過半数代表者)の同意を得て、書面で定めます。
30日前の数え方は、資料によって1日ずれます。東京労働局の手引は、6月分を5月1日までとしています。早いほうの日までに決めておけば、どちらでも間に合います。
区分するときの就業規則は、各日の時刻まで書かなくても構いません。勤務の種類ごとの時刻、組合せの考え方、勤務割表の作り方と周知の方法を定めれば足ります(厚生労働省の通達)。
私は、休日をコロコロ入れ替えるケースも、よく陥るケースだと考えています。
根拠労基法32条の4第2項、労基則12条の4第2項、平成11年基発第45号、厚労省 建設業向けリーフレット(令和7年6月)、東京労働局「導入の手引」
では、いったん決めたカレンダーは、後から変えられるのでしょうか。
カレンダーは途中で変更できる?振替と途中入社・退職の清算
決めたカレンダーは、労使が合意しても、原則として途中で変えられません。休日の振替は予期しない事情でやむを得ないときに条件付きででき、途中入社・退職の人には清算が要ります。
作った後の3つの場面
| 場面 | 守ること |
|---|---|
| 途中で変える | 原則としてできません。例外は、行政が認めた東日本大震災と新型コロナのときの特例です。 |
| 休日を振り替える | 予期しない事情でやむを得ないときに限り、就業規則に振替の規定を置き、前もって振替日を決め、振替後も連続6日以内(特定期間は1週1日の休日)に収めます。 |
| 途中入社・退職 | 働いた期間を平均して週40時間を超えた時間(時間外労働として払った分を除く)に、割増賃金を払います。清算の時点は、退職は退職時、入社は期間の終わりです。 |
清算は「例外なく」必要で、自己都合の退職や、配置転換で別のカレンダーに移る人も対象です。東京労働局の手引の例(年間所定2,080時間)では、5月1日入社で15.8時間分の割増です。払わないと賃金の全額払いに反します。
私は、中途入退社の精算と、カレンダーの変更に特に注意が必要だと考えています。変えたいときは、途中ではなく、次の対象期間から労使協定を取り直すのが原則です。
根拠労基法32条の4の2・24条、平成11年基発第45号、厚労省 震災Q&A A7-1、東京労働局「導入の手引」5頁
では、振替や清算のルールは、どこに書いておけばよいのでしょうか。
まとめ:カレンダーは就業規則と労使協定とセットで整える
カレンダーは、上限を守って作り、起算日までに協定とともに届け出ます。作った後は原則として変えられないため、作る段階の確認が大切です。
カレンダーだけでは使えません。就業規則にも、各日の始業・終業の時刻と休日を定める必要があります(厚生労働省の通達)。やむを得ず振り替えることがあるなら、振替の規定も要ります。
根拠労基法89条1号、平成11年基発第45号
よくある質問(FAQ)
Q1. 1年単位の変形労働時間制のカレンダーは、途中で変更できますか?
A. 原則としてできません。労使が合意しても、途中で労働日を変えたり協定を解約したりはできない、と厚生労働省は示しています。
Q2. 協定届とカレンダーは、いつ、どこに提出しますか?
A. 協定届(様式第4号)にカレンダーを別紙で添え、起算日までに労働基準監督署へ出します。電子申請で、協定の内容とカレンダーが本社と同じなら、本社でまとめて出せます。
Q3. 年間休日は105日必要ですか?
A. 1日8時間で毎日同じなら105日以上です。日や週で時間を変えれば少なくでき、厚生労働省の建設業向けの例は年間休日89日です。
Q4. カレンダーはエクセルで作ってもよいですか?
A. 形式は自由です。各日・各週の労働時間と所定休日が分かれば足ります。
Q5. 1か月単位の変形労働時間制のカレンダーとの違いは?
A. 1か月単位は就業規則でも導入でき、特例事業場は週44時間を使えます。1年単位は労使協定が必須で、特例事業場も週平均40時間です。







