キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースはいくら?
令和8年度の助成額と最低賃金の注意点
パート・契約社員の基本給の賃金規定を3%以上上げると、中小企業は1人4万〜7万円。令和8年度の助成額、最低賃金の公示日・発効日との関係、福岡県の時給で見た3%の計算、申請の流れと2027年に向けた段取りを解説します。
結論: 賃金規定等改定コースは、改定日の前日までにキャリアアップ計画を出し、パート・契約社員などの基本給の賃金規定を3%以上上げて6か月以上運用するなどの要件を満たすと、中小企業で1人4万〜7万円が支給され得る制度です。最低賃金に合わせた引き上げも、計画を先に出し、公示日から発効日の前日までに賃金規定の改定として3%以上上げれば対象になり得ますが、福岡県の令和8年度分はこの期間を過ぎました。今からなら、最低賃金とは別の昇給か、2027年に向けた準備です。
令和8年度の助成額、福岡県の時給で見た3%の計算、申請の流れ、2027年に向けた段取りを解説します。
この記事の要点
- 助成額は4段階で、中小企業は1人4万円(3%以上4%未満)から7万円(6%以上)です。
- 時給1,114円の3%増は1,148円からです。1,147円では2.96%で、要件を満たしません。
- 発効日以後に上げた場合、最低賃金に達するまでの増額分は数えません。
- 賃金規定が無い会社も、新しく作って3%以上上げれば対象になり得ます。
賃金規定等改定コースとは?令和8年度の助成額はいくら?
賃金規定等改定コースは、改定日の前日までにキャリアアップ計画を出し、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定を3%以上引き上げて6か月以上運用するなどの要件を満たした会社に支給されるコースです。令和8年度の額は引き上げ率による4段階で、1人当たり中小企業は4万〜7万円(大企業は2.6万〜4.6万円)、1事業所1年度100人までです。1事業所1年度あたりでは、中小企業は最大740万円(7万円×100人+加算2つ)になります。
額と要件は、厚生労働省の支給要領(令和8年4月8日付け)、パンフレット(令和8年度版)、Q&A(令和8年7月29日版)によります。
この記事で使う言葉
- 有期雇用労働者等: 期間を定めて雇う人と、期間の定めのない人のうち正社員(短時間正社員などを含む)以外の人。パート・契約社員など。
- 賃金規定等: 就業規則や労働協約で賃金の額を定めたもの。等級ごとの賃金表や、個人別の賃金一覧表も含む。
- キャリアアップ計画: 有期雇用労働者等のキャリアアップの取組を、3〜5年の計画期間で記したもの。事業所ごとに労働局へ出す。
- 公示日・発効日: 新しい最低賃金が官報で公示された日と、その効力が生じる日。令和8年度の福岡県は9月4日と10月4日。
1人当たりの助成額(令和8年度・中小企業)引き上げ率で4段階。1事業所1年度100人まで
3%以上4%未満
4万円
4%以上5%未満
5万円
5%以上6%未満
6.5万円
6%以上
7万円
1事業所1年度あたり 最大740万円7万円×100人=700万円+職務評価加算・昇給制度加算 各20万円(本体の改定と同時、1事業所1回)
職務評価加算と昇給制度加算(中小企業は各20万円)は、本体の改定と同時の場合に限り、1事業所1回です。職務評価加算は、改定の前(同じ日でも可)に、正社員も含めて職務評価を行い、結果を改定に反映する必要があります。
賃金規定が無い会社も対象になり得ます。厚生労働省のQ&Aによると、新しく賃金規定を作り、作る前3か月分の賃金台帳と比べて基本給が3%以上増えていれば、支給の対象です。
私は、時給を人ごとに決めている会社には、職種と経験で時給を整理した「賃金表」を作ることを勧めています。
対象者は、改定日の前日から数えて3か月以上前から改定後6か月以上続けて雇い、その6か月間雇用保険に入っているなどの要件を満たす人です。雇用保険に入っていない短時間のパートは、時給を上げても対象者に入りません。
パートを正社員にする場合は、正社員化コースが対象になり得ます(短時間正社員制度・短時間正社員と助成金・正社員化コース)。
根拠支給要領 3001〜3004・0503、パンフレット p.8〜9・p.36・p.41、Q&A ②Q-1
では、毎年の最低賃金に合わせた引き上げでも、この額を受けられるのでしょうか。
最低賃金の引き上げに合わせた賃上げも対象になる?
対象になり得ます。ただし、改定日の前日までにキャリアアップ計画を出し、新しい最低賃金の公示日から発効日の前日までに、賃金規定の改定として3%以上引き上げる必要があります。発効日以後の引き上げでは、最低賃金に達するまでの増額分は数えません。
「最低賃金に合わせた賃上げは対象外」は、半分誤りです。厚生労働省のQ&Aは、新しい最低賃金を下回る等級だけを3%以上上げる改定も、公示日以降、発効日の前日までに行えば支給を受けられるとしています。
福岡県の令和8年度は、1,114円(改定前1,057円)が9月4日に公示され(福岡労働局)、10月4日に発効しました(厚生労働省の全国一覧)。時給1,057円の等級を1,114円に上げる改定(5.39%)は、9月4日から10月3日までなら「5%以上6%未満」に当たり、1日違うだけで1人6.5万円(中小企業)と0円に分かれ得ます(ほかの要件を満たす場合)。
同じ1,057円→1,114円の引き上げでも福岡県の令和8年度(公示 9月4日・発効 10月4日)
A10月3日に改定(発効日の前日)
増額率 5.39%
1人6.5万円の区分
B10月4日に改定(発効日)
最低賃金までの増額は数えない
0円
最低賃金を下回っていた賃金規定を、最低賃金まで上げただけの場合も、原則として対象外です。最低賃金を下回る規定はそもそも法違反のため、数えられるのは最低賃金を上回る部分の増額だけです。
私は、最低賃金に合わせて毎年時給を上げている会社には、その引き上げを、計画を先に出したうえで、公示から発効日の前日までに賃金規定の改定として3%以上行う段取りに変えれば、助成の対象になり得ると説明しています。同じ額を上げるなら、時期と形を整えたほうがよいと考えています。
なお、福岡県では業務改善助成金(令和8年度)の受付も終了しています(福岡労働局)。これまでの解説はこちら、変更点、拡充の記事です。
根拠支給要領 3001※2・3002イ※1、Q&A ②Q-2・Q-5、厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 全国一覧」、福岡労働局の報道発表
では、福岡県の会社は、令和8年度にはもうこの助成金を使えないのでしょうか。
今からでも使える?時給1,114円なら何円上げれば3%?
使える余地はあります。最低賃金とは別の昇給として、改定日の前日までに計画を出し、3か月以上運用した賃金規定を3%以上引き上げ(規定が無い会社は新しく作る形でも可)、6か月以上運用すれば、令和8年度も対象になり得ます。時給1,114円なら、3%は1,148円(+34円)、5%は1,170円(+56円)からです。
3%〜6%に届く時給(円未満は切り上げ)
| 改定前 | 3%(4万円) | 4%(5万円) | 5%(6.5万円) | 6%(7万円) |
|---|---|---|---|---|
| 1,114円 | 1,148円(+34円) | 1,159円(+45円) | 1,170円(+56円) | 1,181円(+67円) |
| 1,150円 | 1,185円(+35円) | 1,196円(+46円) | 1,208円(+58円) | 1,219円(+69円) |
- 括弧は中小企業の1人当たりの額。改定前の時給×1.03などを計算し、円未満を切り上げた当法人の試算です。
1円の端数で外れることがあります。1,114円の3%増は1,147.42円で、四捨五入した1,147円では2.96%です。厚生労働省のQ&Aも、四捨五入で3%に届かない例を不可としています。
支給要領は、改定前の賃金規定を3か月以上運用していることを要件にしています。10月4日に時給を1,114円に上げて賃金規定を直した会社に当てはめると、次の改定は、直した規定を3か月以上運用してからになります。

私は、パート・契約社員の時給の一覧を作り、令和8年度の最低賃金を下回っている人がいないかを確かめることをお勧めします。下回っていれば、助成金より先に是正が要ります。
いまの賃金が、最低賃金を下回っていないか確かめませんか。
賃金の数字をお送りいただくと、社労士が、下回っている人と直す箇所、来年の引き上げに向けた賃金の組み方を、3営業日以内に無料でお返しします。
根拠支給要領 3002ハ・3003ロ、Q&A ②Q-11・Q-12・Q-13(表と端数は当法人の検算)
では、計画を出してから支給まで、何をどの順で進めればよいのでしょうか。
申請方法は?計画書の提出から支給申請までの流れ
流れは、キャリアアップ計画の提出、賃金規定の改定、6か月分の賃金の支払い、支給申請の4段階です。計画は改定日の前日までに労働局へ出し、支給申請は6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に行います。
- キャリアアップ計画を出す: キャリアアップ管理者を置き、このコースの取組を書いた計画を、改定日の前日までに労働局へ出します。
- 賃金規定を改定する: 3%以上上げた規定を周知し、10人以上の会社は改定後すみやかに(遅くとも支給申請の前までに)労働基準監督署へ届け出ます。
- 6か月分の賃金を払う: 改定後の規定で6か月以上払います。改定日の前日から数えて3か月前から支給申請日まで、基本給と定額の手当は下げません。
- 支給申請をする: 6か月分を払った日の翌日から2か月以内に、賃金台帳などを添えて労働局へ出します。
私は、申請でいちばん多いのは、順番の取り違えだと考えています。賃金を上げてから助成金を知り、計画を後から出しても対象になりません。
「改定日」は、規定の施行日ではなく、上げた賃金が反映される「適用日」です。4月1日から上げた賃金を当日分から払うなら改定日は4月1日で、計画はその前日までに出します。
従業員10人未満の会社でも、就業規則か労働協約が要ります。改定日までに社内に周知し、支給申請の前に労働基準監督署へ届け出るか、労働者代表と事業主の氏名などを書いた申立書を付けます。
申請期限の起点は、就業規則上の支払日ではなく、実際に賃金を払った日です。期限を過ぎた申請は受け付けられず、申請後に不足に気づいて追加で払っても、支給の対象にはなりません。
支給されない主な例上げる前に確かめる
- 改定日の前日までに計画を出していない、計画にこのコースを書いていない
- 基本給を上げる一方で、定額の手当を下げた
- 正社員の賃金規定を下げた
- 年齢だけで対象者を絞った
どれも、上げる前に一度確かめれば避けられます。
私の考えでは、申請に社労士が関わる意味は、計画の届出、規定の書き方、6か月後の支給申請の期限を、最初の段階で1本の日程にまとめられることです。
根拠支給要領 0401・3002・3005、パンフレット p.10〜11・p.38、Q&A 共通Q-2・Q-5・Q-7・Q-10、②Q-4・Q-8、参考例2・3
では、2027年の最低賃金に合わせるには、いつから準備すればよいのでしょうか。
2027年の最低賃金に合わせるには、いつ何をすればよい?
新しい最低賃金の公示日から発効日の前日までに、賃金規定の改定として3%以上上げられるよう、計画(改定日の前日まで)と賃金規定を先に整えておきます。2027年の日程は未定なので、例年の流れに合わせて段取りを組みます。
例年は7月下旬に国の目安、8月に都道府県の答申、9月ごろ公示、10月ごろ発効です(令和8年度は、国の目安が7月28日、福岡県は答申が8月10日、公示が9月4日、発効が10月4日)。発効日は都道府県で違い、令和8年度は10月1日から12月2日まで分かれています。
2027年の最低賃金に合わせる段取り(例)日程は年と都道府県で違います
1春〜6月ごろ
- 時給の一覧と賃金表を作る(先に作るなら3か月以上運用)
27月下旬〜8月
- 国の目安と答申を見て、上げ幅と改定日を決める
3改定日の前日まで
- キャリアアップ計画を出す(1か月前など余裕を持って)
4公示日〜発効日の前日
- 賃金規定を3%以上上げる改定をする(この日が改定日)
56か月分を払った後
- 翌日から2か月以内に支給申請
賃金表を先に作って運用するなら、改定の3か月以上前に始めます。改定前の規定を3か月以上運用していることが要件だからです。表が無い会社は、新しく作るときに3%以上上げ、作る前3か月の賃金台帳と比べる方法もあります。
私は、賃金表を先に作って運用しておくなら、2027年の最低賃金に合わせるには、夏より前に作っておくと段取りに余裕があると考えています。
厚生労働省のQ&Aは、改定した賃金規定を支給申請日まで運用することを求めています。毎年使うなら、10月1日に改定し、月末締め翌月15日払いの場合、申請期間は翌年4月16日〜6月15日なので、次の改定はその申請の後にします。支給要領で回数に上限があるのは、加算だけです。
私は、賃金表はパートと正社員の待遇の違いを説明するとき(同一労働同一賃金)の土台にもなると考えています。
根拠支給要領 3002ハ・0503、Q&A ②Q-1・Q-12、中央最低賃金審議会の答申(令和8年7月28日)、厚生労働省の全国一覧、福岡労働局
では、今日から何を始めればよいのでしょうか。
まとめ:最低賃金に合わせるなら、公示日から発効日の前日までに
最低賃金に合わせた引き上げも、改定日の前日までに計画を出し、公示日から発効日の前日までに賃金規定の改定として3%以上上げ、6か月以上運用すれば、助成の対象になり得ます。福岡県の令和8年度分は過ぎたため、今は最低賃金とは別の昇給か、2027年に向けた賃金表と計画の準備から始めます。

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よくある質問(FAQ)
Q1. 賃金規定等改定コースとは、どんな助成金ですか?
A. キャリアアップ助成金の1コースで、改定日の前日までに計画を出し、パート・契約社員などの基本給の賃金規定を3%以上引き上げて6か月以上運用するなどの要件を満たすと、支給され得ます。
Q2. 賃金規定等改定コースはいくらもらえますか?
A. 1事業所1年度あたり、中小企業は最大740万円です(6%以上の引き上げを上限の100人に行うと7万円×100人で700万円、これに職務評価加算と昇給制度加算の各20万円を同時に受けた場合)。1人当たりは引き上げ率に応じて、中小企業は4万円(3%以上4%未満)から7万円(6%以上)、大企業は2.6万円から4.6万円です(大企業の最大は490万円)。加算は本体の改定と同時の場合に限り、1事業所1回です。
Q3. 支給申請はいつからできますか?
A. 改定後6か月分の賃金を実際に払った日の翌日から、2か月以内です。例えば4月1日に改定し、月末締め翌月15日払いなら、10月16日から12月15日までです(厚生労働省のパンフレットの例)。
Q4. パートは全員が対象者になりますか?
A. なりません。改定日の前日から数えて3か月以上前から改定後6か月以上続けて雇い、その6か月間雇用保険に入っていて、3%以上昇給したなどの要件を満たす人だけが対象です。
Q5. キャリアアップ計画書は、いつまでにどう出しますか?
A. 改定日の前日まで(行政機関の休日なら翌日まで)に、管轄の労働局へ紙か電子申請で出します。計画にこのコースの取組を書いていないと受給できません。厚生労働省は、1か月前など余裕を持った提出を勧めています。







